ラピタライブ

レーシングドライバー

塙 郁夫 さん

IKUO HANIWA

コロラド州で開催される「パイクスピークインターナショナルヒルクライム」のEV(電気自動車)クラスに、自ら組み上げたマシンで出場した塙さん。 2018年、グアム島で開催されたハードなスプリント耐久レース「スモーキン・ホイールズ」には、塙さんは最新マシン「アース・ランナー」で出場し、見事に優勝を勝ち取った。

レース中は常にサバイバル
レーサー・塙郁夫さんの「カーセーバー」論
レーシングドライバーの塙郁夫さんは、高校三年生のときから、数十年にわたり国内外のオフロードレースに参戦し続けてきた。ゴビ砂漠もシルクロードも走破した。広大な砂漠やサバンナなど、ラリーで昼夜を徹して大自然の中を走り続けた。近年は、アメリカのロッキー山脈で開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」という、標高4300メートルへ一気に駆け上がる過酷なレースにEV(電気自動車)でチャレンジし、好成績を上げ、世界の注目を集めている。

道なき道を何日もぶっ続けで走り、何度も生死に関わる極限状態を乗り越えてきた塙さん。その体験は聞くだけで、ワクワクし、ドキドキする。
「僕の出るレースは、常にどうやって極地から生還するかというサバイバルなんですよ。ヒルクライムレースは、ゴールが標高4300メートルで富士山よりはるかに高いので、温度差がハンパじゃないんです。スタート地点は、観客がTシャツと短パンで頑張れよー、と手を振っている。しかし登っていくと、途中から雪や雹が降り注いで、ゴールポイントは吹雪いて積雪している」
「砂漠のラリーは、日中は炎天下を走り、気温は40~50度ですが、夜は一気に氷点下に下がります。マシントラブルで立ち往生しても頼れるのは自分とパートナーの二人だけで、もし野営となったら夜にはコヨーテの群れが襲ってくる。だから、動けなくなった時に、三日間、生き抜くためには何が必要か。それを念頭に周到に準備をします。三日間というのは、衛星電話でSOSを出せば、どんな場所でも三日後には助けが駆け付けて来てくれるからです」
極限状態でのサバイバル。それは災害の危機を、いかに無事に乗り越えるかにも共通する。塙さんはレース体験を生かして、一般向けの危機管理などの講演も行っている。 「三日間頑張るというのは、災害でも同じです。今の日本ではどんな場所で被災しても、三日後には救助が必ず来ると思っていい。だから防災セットも闇雲にアイテムを増やすのではなく、三日分を用意すればコンパクトで無駄がないはずです」
危機管理のプロフェッショナルでもある塙さんに、いざというときを乗り越える心構えと、備えておくべきアイテムについて伺った

コロラド州で開催される「パイクスピークインターナショナルヒルクライム」のEV(電気自動車)クラスに、自ら組み上げたマシンで出場した塙さん。 2018年、グアム島で開催されたハードなスプリント耐久レース「スモーキン・ホイールズ」には、塙さんは最新マシン「アース・ランナー」で出場し、見事に優勝を勝ち取った。

過酷な環境のレースに参加することは「常に遭難者のようなもの」と塙さん。ピンチを乗り切る智恵とは?

「近頃、本当に日本は自然災害が多いですよね。地震が来て山間部の村が孤立したとか、大雨で家が浸水して、道も冠水して車で避難できないとか、しばしばニュースになるでしょう。そんなとき、一番頼りになる避難シェルターって、四駆の自動車なんですよ」
今回のメインテーマは防災と車だが、塙さんは防災についての講演で、いつも「四駆を持つ重要性を知ってほしい」と訴えている。四駆仕様の車にはクロスカントリー車やSUV、ピックアップトラップなどがある。まずは、その大切さを伺った。
「北陸などの地震でも、山崩れや土砂崩れで道路が分断されて、いくつもの集落が音信不通になっているという報道がありましたね。実はあのとき、僕の北陸の仲間は、四駆でボランティアに行ってるんです。コンビニの弁当や物資を被災地に届けていました。地震で道が損傷したら、コンパクトカーや普通の高級車なら少しの段差でも通れないんだけど、四駆だったら多少の段差はへっちゃらなんですよ。大雨でもそうです。四駆って、車高が高いから、実は水が1メートルも冠水した道も走れるんですよ。
四駆は値段が高いとか、燃費が悪い、大きいと敬遠する人がいるけど、生命保険やがん保険に入るつもりで持つべきだと僕は思います。日本で発生する自然災害の幅広い状況で頼りになり、家族を守ってくれる頑丈なシェルターです。被災して移動するにも有利ですし、動けなくなった場合の車中泊にも、家族が寝られるだけの居住性の良さがあります」

ラ・ピタのカーセーバーと塙さん。「カスタマイズすれば、さらに役立つセットになりますよ」

次にラピタの防災セット、カーセーバーの内容について聞いた。
カーセーバーは、運転中の災害に備えた防災セットで、空腹・脱水・トイレ・寒さ・清潔などの問題に対応できるアイテムが、三角反射板付きのケースに収められている。2017年には鳥取県の大雪で車600台が立ち往生して30時間もの閉じ込めが発生した。そのように長時間にわたって車に閉じ込められた場合や、災害から家族で避難する際などに頼れるセットとなっている。
塙さんは、「まず、こういうセットを備える意識が大事ですね。これをスタートに、自分で考えて、中身を足していくことですよ」と、さらに頼れるセットにするためのカスタマイズを推奨する。
まずは被災したときに気掛かりな水分補給について。カーセーバーには、7年保存可能な500ミリリットルの水が2本入っている。これで十分か、塙さんに聞くと、「実は、人って3日や4日飲み食いしなくても問題ないんです」と意外な答えが帰ってきた。
「食料は、20日間食わなくても生きられます。だから追加する場合はゼリー飲料をおすすめします。水分とエネルギーを同時に補給できますからね。ラリーレースでは、2日間くらいノンストップで砂漠の中を走るので、ゼリー飲料で手早く栄養補給するんです。災害時でも役に立つ局面はあるはずです」

手に密着する薄いゴム手袋も塙さんは薦める。「薄手のゴム手袋は、指先で細かい作業ができて、不衛生なものを始末する場合などに役に立ちます。ケガを処置する場合にも便利です」

次に塙さんはカーセーバーに入っている軍手に目を留めた。
「このセットには一般的な布の軍手が入っていますが、軍手では間に合わないハードな場面に備えてホームセンターでも買えるナイロン製の手袋を加えることをお勧めします。水は通らないし、柔らかくて手先が器用に使えて、切り傷などを負う危険も少ない。値段は500円程度と手頃ですよ」
カーセーバーには片面が金色で、もう片面が銀色の「ハイブリッドレスキューシート」がセットされている。寒さを防ぐため防災セットには欠かせないアイテムだが、「これはラリーカーに積むことも義務付けられていますよ」と塙さんも体験から有用性を実感している。
「夜の砂漠で冷えても、これを被ってうずくまると体温を奪われない。保温性は高いです。それにキラキラ反射するから、救助隊に自分の場所を知らせるシートにもなるんですよ」

塙さんが様々なレースで常備している救急セット。消毒用のオキシドールなど多彩なアイテムがコンパクトに詰められている。

カーセーバーには、風呂に入れないとき全身を拭く「からだふきシート」の70枚パックが入っている。こういったボディシートには爽快な香り成分を含んだタイプもあるが、これは無香料、ノンアルコールのタイプ。塙さんによれば、災害の備えには、無香料タイプが正解だ。
「なぜ無香性がいいかというと、たとえば眠気を取ろうと顔を拭くと、クールな爽快成分が入ったものは、目が痛くて開かなくなることがある。ノーマルなタイプのほうが安心して難でも使えます。こういったウェットティッシュ的なアイテムは、何にでも使えて重宝するので、多く用意するのがいいですよ」

被災時には擦り傷や切り傷などケガを負いやすい。救急絆創膏、綿棒、包帯などが入った救急セットがカーセーバーにはセットされている。
「これはシンプルな中身ですが、消毒薬、痛み止め、抗生物質なども入れておくとさらに心強いですね」特に重要なアイテムと心得たい。

愛用のマルチツール2種。左はペンチなど工具が充実したタイプ。右はナイフ、ハサミなど日常で使う刃物が一本に収まっている。

カーセーバーは、基本セットは2種類がある。他に入れたいものがあればオーダー時にオプションで追加できる。もちろん自分がホームセンターなどで買ったものを加えてもいい。
塙さんは懐中電灯を入れることを薦める。それも、頭にベルトで巻けるヘッドライト式がベストだ。
「夜に外で活動することになると、手に懐中電灯を握ってると不便ですからね。ハンズフリーで使えると楽だし安心です。スペアの電池を多く用意することも忘れずに」

塙さんが愛用するヘアバンド式のライト。両手が自由で運転にも便利だ。
塙さんがレースの時に必ず常備するのがマルチツール。畳めばポケットにも入るコンパクトな工具で、ペンチ、ナイフ、ハサミなどが一体になっている。防災セットにも入れれば、様々な場面で役立つ。
「レースカーには車を修理する工具は全て載せています、でも些細なトラブルって、いっぱいあります。しかし毎回、工具箱を引っ張り出したら時間が惜しい。ちょっと針金を切るとか、何かのパッケージを開けるなどハサミやナイフが欲しいとき、マルチツールはサッと使えて効率がいい。被災時もきっと役に立ちますよ」
よりマルチツールを使いこなすコツは、「防災セットのケースや工具箱に入れないことです。運転席の近くに常備すること」と塙さん。これは他のアイテムにも言える。「ケースに入れて安心していてはダメなんです。車のあちこちに、いろんなアイテムを、サッと便利に使えるように配置するのが一番です。そしてマルチツールなどは、日ごろから使って慣れておく。つまり、『防災セットのケースは車全体』なんです。そんな発想で用意すれば、いざというときに役立ちますよ」

塙さんのおすすめアイテムを加えて、さらに頼もしさがアップしたカーセーバー。ちなみに「寒いときは身体に新聞紙を巻いて、さらにサランラップを巻くと本当に暖かいですよ」という防寒テクニックもある。覚えておけばいざとい場面で役に立つ。

ほか、塙さんが様々な場面で頼りにするのが大きな黒いごみ袋だ。
「はさみで手と頭の位置を切って、ポンチョみたいに被れば簡易カッパ。ビリビリ破って脱いで捨てれるから、片付けも手間がいらない。寒いときに被ると暖かいし、敷いて寝転がれる。薪にする小枝を集めるなど、幅広く使えるんです」
このようにいくつもの役割を兼用するアイテムを選ぶ知恵も、サバイバルには大切だという。
「僕の仕事は極地から生還することなんです。どれだけリスクを想定して、どれだけコンパクトで、どれだけ無駄を省けるか。否が応でも賢くなってきますよね。失敗も何度もあります。『こんなもの使えない』ってアイテムを持って行ったときは、本当に腹が立ちます。生きるか死ぬかギリギリのときに、役に立たない怒りと悔しさ。泣くに泣けませんよ。災害でも同じです。防災セットは、買って車に載せて安心じゃない。自分や家族にとって本当に役に立つように、よくよく考えてカスタマイズすることをお勧めします」

  • 取材中、終始ニコニコと笑顔の塙さん。現在58歳とは思えない若さにも驚く。幾つもの危機を乗り越えて鍛えられたメンタルの強さを感じる。どんなピンチでもポジティブであることも、サバイバルには大切だという。
    「ものごとって考え方次第で180度変わりますからね。被災したとき、運が悪いと落ち込んで引きずる人もいれば、命が助かっただけで儲けものだとすぐに前向きになる人もいる。
    タイとカンボジアのジャングルをラリーで走ったとき、ジャングルの中で動けなくなったんです。そこへスコールがザーッと降ってきた。そこで僕の相棒は、どうしたと思います? シャンプーで頭を洗い始めたんです。『ちょうど頭を洗いたかったんだ。スコールが来てラッキーだ』ってね(笑)。弱り目に祟り目で落ち込むのが普通ですが、あくまでポジティブに、プラス思考でいればピンチって不思議と乗り切れるものなんです。災害も同じだと思います。まずは気持ちの持ち方ひとつで、運命は変わるんですよ


  • バッグは撥水仕様。車にフック状の面テープで固定できて、運転中でも揺れ動かない仕掛けになっている。カーセーバーの車用緊急タイプは牽引ロープとブースターケーブルもセットされている。その重要性は塙さんも強調する。「牽引ロープは、自分が動けないときに牽引してもらえるし、動けない車に出会ったときは助けられる。ブースターケーブルもバッテリー上がりに関して同様です
    カーセーバーと塙さん。緊急時には三角反射板にもなるデザイン。ほか、リュック式に背負えるなど工夫が凝らされている。

塙 郁夫 / はなわ・いくお

1960年、茨城県生まれ。高校3年生で「全日本オフロードレース選手権」でレースデビューする。「JFWDAチャンピオンシップレースシリーズ」で10年連続チャンピオンを獲得するなど活躍して、1991年、アメリカのオフロードレース「Baja1000」で日本人初完走を果たし、2002年にはクラス優勝など、海外でもトップレーサーとして知られる。近年は「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」のEV(電気自動車)クラスに参戦して、世界のEVの普及にレースを通して貢献。フレーム製作や、メーカーと共同でパーツ開発するレーシングコンストラクターとしてもモータースポーツに貢献している。

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