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障害福祉サービスの事業所では、令和6年4月から、感染症と自然災害のBCP(業務継続計画)を作り、職員への研修と訓練を定期的に行うことが義務になっています。令和3年度の報酬改定で決まり、3年間の準備期間を経て、努力義務から義務に変わりました。
ただ、根拠になる基準は、サービスによって分かれています。研修と訓練の回数も、年1回のサービスと年2回のサービスがあります。計画が無い事業所は、令和6年度から基本報酬が減らされる仕組みもできました。
この記事では、厚生労働省の基準の解釈を示した通知と、報酬改定の資料をもとに、障害福祉サービスのBCPで何が求められているかを、サービスごとに整理します。
この記事でわかることは、次の5点です。
- 障害福祉のBCPの根拠と、研修・訓練の回数(サービスごとの表)
- 研修と訓練で求められていること
- 計画が無い場合の減算と、経過措置の期限
- 障害福祉用のガイドラインとひな形
- 入所・入居系と相談支援で、計画に書いておきたいこと
根拠の基準と研修・訓練の回数は、サービスで分かれる
令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(令和3年2月4日)は、障害福祉サービス等のすべての事業者に、運営基準で計画づくりと研修・訓練を求め、3年間の経過措置を置くとしています。解釈通知では、令和6年3月31日までは努力義務とされていました。
どの基準のどの条に書かれているかと、研修・訓練の回数は、次のとおりです。回数は、それぞれの基準の解釈通知に書かれている目安です。
| サービス | 根拠の基準と条 | 研修・訓練 |
|---|---|---|
| 居宅介護、生活介護、短期入所、就労系、共同生活援助など、障害福祉サービスの事業 | 指定障害福祉サービスの事業等の基準 第33条の2(居宅介護以外のサービスは、この条を準用) | それぞれ年1回以上 |
| 障害者支援施設 | 指定障害者支援施設等の基準 第42条の2 | それぞれ年2回以上 |
| 計画相談支援 | 指定計画相談支援の事業の基準 第20条の2 | それぞれ年1回以上 |
| 地域相談支援 | 指定地域相談支援の事業の基準 第28条の2 | それぞれ年1回以上 |
| 児童発達支援など、障害児の通所支援 | 児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の基準 第38条の2 | それぞれ年1回以上 |
| 障害児入所施設 | 児童福祉法に基づく指定障害児入所施設等の基準 第35条の2 | それぞれ年2回以上 |
障害児入所施設は、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」の第9条の4でも、業務継続計画を策定し必要な措置を講じることが義務とされています。認可保育所などとの違いは、保育園のBCPは努力義務?|施設で違う3通りを条文で確かめるで扱っています。
どれだけの事業所が計画を作っているかについては、報酬改定検討チームの資料(令和5年11月29日)が、令和5年度の調査の速報値として、「策定完了」または「策定中」と答えた割合を、感染症で83.9%、自然災害で81.7%としています。
研修と訓練で求められていること
指定障害福祉サービスの事業等の基準の解釈通知(平成18年12月6日障発第1206001号)は、研修と訓練の中身を次のように書いています。
- 研修では、計画の中身を職員の間で共有し、ふだんから備えておく理由と、いざというときの動き方を理解してもらう
- 定期的な研修に加えて、新しく採用した職員には別に研修を行うことが望ましい
- 研修の内容は記録する
- 訓練では、事業所の中の役割分担を確かめ、感染症や災害が起きたときに行う支援を演習する
- 訓練のやり方は問わないが、机上で行うものと実地で行うものを組み合わせるのが適切
研修と訓練は、他のサービス事業者と連携して行ってもかまわないとされています。感染症の計画に関する研修と訓練は、感染症の予防とまん延防止のための研修・訓練と一緒に行うこともできます。また、研修と訓練には、できるだけ全員が参加できるよう工夫するのがよいとされています。
年1回の事業所でも、感染症と自然災害の両方を扱うことになります。年度の初めに、どちらの訓練をいつ行うかを決めておくと、回数を落としにくくなります。
計画が無いと、基本報酬が3%か1%減る
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(令和6年2月6日)で、「業務継続計画未策定減算」が新しく設けられました。感染症か非常災害のどちらか、または両方の業務継続計画を作っていない場合や、計画に従って必要な措置を講じていない場合に、基本報酬が減らされます。
| 減らされる割合 | 対象のサービス |
|---|---|
| 所定単位数の3% | 療養介護、施設入所支援(障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設 |
| 所定単位数の1% | 居宅介護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、計画相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービスなど |
経過措置として、令和7年3月31日までは、「感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備」と「非常災害に関する具体的計画」の策定ができていれば、減算しないこととされていました。居宅介護や重度訪問介護、計画相談支援など13のサービスは、「非常災害に関する具体的計画」をそもそも作る決まりが無いことなどから、同じ日まで減算しないとされていました。
この経過措置の期限は、令和7年3月31日でした。新しくできた就労選択支援だけは、令和9年3月31日まで減算しない経過措置が設けられています。
ガイドラインとひな形は、障害福祉用がある
厚生労働省は、障害福祉サービス事業所等のための業務継続ガイドラインを、感染症と自然災害に分けて公開しています。2026年10月時点で、厚生労働省のページに載っているのは次の資料です。
- 感染症:『障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン』(令和2年12月)と、入所・入居系、通所系、訪問系の3つのひな形
- 自然災害:『障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン』(令和3年3月)と、ひな形
解釈通知は、計画に書く項目として、感染症では「平時からの備え」「初動対応」「感染拡大防止体制の確立」、災害では「平常時の対応」「緊急時の対応」「他施設及び地域との連携」を挙げ、中身はこの2つのガイドラインを参照するよう書いています。感染症と災害の計画を1つにまとめて作ってもかまわないとされています。
自然災害のガイドラインは、共通の事項に加えて、通所系、訪問系、相談支援事業のそれぞれに固有の事項の章を設けています。また、複数の事業所を持つ法人では、事業所ごとの計画とは別に、法人本部としての計画も作り、両者を連動させることが望ましいとしています。
入所・入居系で、計画に書いておきたいこと
自然災害のガイドラインは、入所・入居系のサービスは利用者に「生活の場」を提供しているため、施設が被災しても、サービスを止めるわけにはいかないと考えておく必要がある、としています。そのうえで、自分たちの力でサービスを続ける場合と、他の場所へ避難する場合の、両方を前もって考えておくよう求めています。
ガイドラインが挙げている例のうち、障害福祉の現場で特に押さえておきたいのは次の点です。
- 被災時にも必ず行う最低限の業務は、食事・排泄・与薬など。医療を必要とする度合いの高い利用者が多い事業所では、医療的ケアも入る
- 薬を管理している利用者は、避難のときに薬を持ち出し忘れないようにしておく
- 避難経路は、たとえば車いすに職員を乗せて実際にたどってみると、段差や階段などを事前に確かめられる
- 職員の少ない祝日や夜間、天気の荒れた日など、条件の悪いときも想定しておく
最低限の業務をどう選ぶかの考え方は、BCPの重要業務とは?決め方の5ステップと業種別の具体例で扱っています。
相談支援事業所のBCPは、利用者の側から考える
相談支援事業所は、自分の事業所の業務を続けるだけでなく、利用者が使うほかのサービスとの調整も担います。自然災害のガイドラインは、相談支援事業所に固有の事項として、次のようなことを挙げています。
- 災害のときに優先して安否を確かめる必要がある利用者を、あらかじめ利用者台帳などで分かるようにしておく
- 緊急の連絡先は、固定電話・携帯電話・メールなど、複数の手段で把握しておく
- 避難先で薬の情報を確かめられるよう、利用者に、おくすり手帳を持っていくよう伝えておく
- 市町村と連携して、避難行動要支援者である利用者を把握し、自治体から頼まれた場合は個別避難計画づくりに協力する
- 利用者が使う通所・訪問などの事業所が、台風などのときにサービスを休む基準を、前もって共有しておく
障害福祉サービスの種類や量は市町村が決めるため、災害時のサービスの利用調整は、市町村と相談支援事業所が一緒に進める必要がある、ともされています。平常時から、関係する機関の間で、災害時の動き方を話し合っておくことが前提になります。
自分の事業所で確かめたいこと
最後に、障害福祉サービスの事業所で確かめておきたい項目をまとめます。
計画
- □ 感染症と自然災害の、両方の業務継続計画がある
- □ 自分のサービスの根拠の基準と、研修・訓練の回数を確かめている
- □ 複数の事業所がある場合、法人本部の計画と事業所の計画をつないでいる
研修と訓練
- □ 年1回か年2回の研修と訓練を、年度の初めに予定に入れている
- □ 新しく入った職員にも研修をしている
- □ 研修と訓練の内容を記録している
- □ 机上の訓練と、実地の訓練を組み合わせている
利用者への備え
- □ 被災時にも続ける最低限の業務(食事・排泄・与薬、医療的ケアなど)を決めている
- □ 服薬が必要な利用者の薬を、避難のときに持ち出せるようにしている
- □ 相談支援事業所では、優先して安否を確かめる利用者が台帳で分かる
よくある質問
Q. 障害福祉サービスのBCPは、いつから義務になりましたか?
令和3年度の報酬改定で運営基準に入り、3年間の経過措置を経て、令和6年4月から義務になりました。令和6年3月31日までは努力義務とされていました。障害児入所施設の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第9条の4も、令和3年の省令で加えられています。
Q. 障害福祉の訪問系の事業所も、BCPと研修・訓練が必要ですか?
必要です。居宅介護などの訪問系も、指定障害福祉サービスの事業等の基準 第33条の2の対象で、研修と訓練はそれぞれ年1回以上とされています。訪問系の事業所に固有の事項は、自然災害のガイドラインに別の章があります。
Q. 障害福祉のBCPは、どのひな形を使えばよいですか?
解釈通知は、計画の記載内容について、障害福祉サービス事業所等のための2つのガイドラインを参照するよう書いています。障害福祉用のひな形も公開されているので、まずはそちらから作ると、解釈通知が挙げる項目と合わせやすくなります。
Q. 障害福祉のグループホーム(共同生活援助)の研修と訓練は、年に何回ですか?
共同生活援助は、指定障害福祉サービスの事業等の基準の中で第33条の2を準用していて、解釈通知が示す目安は、研修・訓練ともに年1回以上です。年2回以上とされているのは、障害者支援施設と障害児入所施設です。ただし、計画が無い場合の減算は、共同生活援助は3%の側に入っています。
まとめ
障害福祉サービスのBCPは、令和6年4月から義務になっています。根拠の基準と研修・訓練の回数は、障害福祉サービス、障害者支援施設、相談支援、障害児の通所と入所で分かれます。計画が無い場合の減算の経過措置は、就労選択支援を除いて令和7年3月31日で終わりました。
計画を作るときは、障害福祉用のガイドラインとひな形を使い、入所・入居系なら生活の場をどう守るか、相談支援なら利用者をどう見守るかまで書いておくと、実際に使える計画に近づきます。
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出典
- 厚生労働省『令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要』(令和3年2月4日)
- 厚生労働省『令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要』(令和6年2月6日)
- 厚生労働省・こども家庭庁『横断的事項について(業務継続に向けた取組の強化、送迎について)』(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第43回 資料3、令和5年11月29日)
- 厚生労働省『指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)新旧対照表』
- 厚生労働省『指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準について 新旧対照表』
- 厚生労働省『指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について 新旧対照表』
- 厚生労働省『指定地域相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について 新旧対照表』
- 厚生労働省『児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準について 新旧対照表』
- 厚生労働省『児童福祉法に基づく指定障害児入所施設等の人員、設備及び運営に関する基準について 新旧対照表』
- 厚生労働省「感染対策マニュアル・業務継続ガイドライン等」
- 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン等」、『障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン』(令和3年3月)
