ラピタライブ

中京テレビ放送株式会社

報道機関の備蓄管理

災害時はひとりでも多くの命を守るため、
報道機関としての使命を果たしたい
2016年に名古屋駅南のささしまライブへ移転した中京テレビ(以下CTV)。名古屋で4番目の民放局であり、先輩局に追いつけ追い越せのチャレンジ精神が魅力だ。
新社屋プロジェクトがスタートして間もなく東日本大震災が発生したため、設計からすべて見直し、万全のBCP対策を施した。社屋は基礎免震構造とし、震度7の揺れも震度4程度に軽減できるような構造設計にした。また、ガスは中圧Aという大震災でも切れたことがないガスを通してもらい、ガスでも重油でも稼働するデュアルフューエルという非常用発電機を採用した。重油も15万リットル備蓄する他、敷地内にガソリンスタンドも設置し、ガソリンや軽油も備蓄している。

中京テレビで福利厚生などを中心に災害担当として備蓄品の管理を務める生田佳世さんに話を聞いた。

生田さんの現在の所属部署、担当業務などを教えてください。

総務局総務部で福利厚生を中心に、社員食堂の管理や支社支局含めた全社の備蓄品の管理もしています。また、CTVがあるささしまライブのまちづくり協議会に属していて、ささしまライブに関係を持つ会員と共に、エリアの活性化にも貢献しようとしています。

備蓄品の選定基準はどのようにされてますか。

1995年の阪神淡路大震災のときに大きく見直したと聞いています。ライフラインがストップし、建築物が崩壊する中で業務を継続できるように備蓄品の種類も数も増やしました。その後、鳥インフルエンザのようなパンデミックの際に対応できるよう、防護服やアルコール消毒液、高機能マスクなどを備蓄するようになりました。そして、東日本大震災の後にも更に備蓄量を見直し、備蓄食料品は400人分を3日から5日に増やしました。

防護服も備蓄されているんですね?

やはり報道機関なので、危険な地域にも取材に行く事もありますから、阪神淡路大震災の時に買い揃えて準備してあります。

報道機関ならではの備蓄ですね。400人という数字はどう割り出すんですか?

大規模地震が起きたら全員出社が義務付けられています。その中には災害現場に出動する取材記者やカメラクルー、技術のメンバーがいます。それ以外で本社に残り情報を集めるなど放送に携わるメンバーと後方支援にまわるメンバーの人数がどのくらいになるか各セクションにヒアリングし、おおよそ400人となったのです。

災害発生時の事業継続も報道機関は重要なんですね。

当社では火災避難訓練のほか、大地震を想定しての訓練をしています。今年は徒歩出社訓練を行い、地震発生から何分後に何人の社員が出社できるかという訓練を行いました。机上の訓練だけでは見えなかったことが洗い出されたと思います。少人数で災害対策本部を立ち上げるにはどうしたらいいか、報道や技術の経験者はすぐに駆け付けることができるのかなど、人事部と総務部で手分けしてシミュレーションしています。

全社的な災害マニュアルを作るのも総務部の仕事です。CTVでは災害対策本部の下に3つの対策部を編成します。放送・事業・支援の各対策部のうち、支援対策部は総務部が中心となって各所と連携をとります。そして、報道・技術の経験者などを交代要員として人員のバランスをとりながら長期戦に備えることにしています。

災害時の電力確保はどうしていますか。

もし、大地震で電力が落ちたときは、自動的に非常用発電機が作動するように設計されています。放送を中断させる訳にはいきませんので、非常用発電機が立ち上がるまでは、UPSで電源をつなぎます。また、非常用発電機で7日間放送できるよう15万リットルの重油も備蓄しています。3台の非常用発電機の内2台は、前述のようにガスでも稼働するデュアルフューエルのため、ガス管が切れていなければ7日以上放送することができます。

防災や備蓄に取り組みはじめてから、特に苦労された事や困った事などはありますか。

食料の備蓄は食堂の近くがいいと聞いていたので、11階の食堂近くにある倉庫に2ℓペットボトルの水と食糧を保管しています。食料はアルファ米やおかず、野菜ジュース、羊羹、飴などバリエーションもできるだけ増やし、400人が5日間生活できる様に備蓄しています。選ぶ基準は保存期間が長いものを選び、無駄を少なくするよう心掛けています。また、食べ慣れているものや食べ慣れている味を選んでいます。食堂にも食材が保管しているので、それを含めれば1週間分にはなると思います。そして、8階にも倉庫があり、マスクやアルコール消毒液、毛布、軍手などを備蓄しています。
ヘルメットは各部署に必要な数を分配していますが、人事異動ごとに人数が変わるので管理に苦労しています。飲料の自動販売機は社屋移転を機に災害用に変更したので、大災害の時は中に入っている飲料を無償でいただける契約をしています。備蓄品を置くスペースも限られていますので、できるだけ嵩(かさ)を減らす工夫をしています。

CSR活動について教えてください。

社屋隣の広場にむけて屋外ビジョンを設置しています。これは全国で初めて災害時の情報伝達施設として国から補助を受けて設置したものです。通常時はニュースを中心に放映していますが、1時間に5分はエリアの防災情報を放映しているほか、災害時は災害に特化した情報を出すことになっています。この広場は帰宅困難者の一時待避場所となっているので、この場にいる方に必要なエリア情報も出せるようにしています。近隣の方に向けて役立つものを発信していくことを心がけています。
また、1階のエントランスホールや多目的スペースは、帰宅困難者を24時間受け入れる待避施設となっているので、マンホールトイレを設置したほか、充電用電源も確保しています。

街中電気不足の中、CTVだけが明るいと帰宅困難者や被災者など多くの人が集まってきそうですね。

帰宅困難者の受け入れ施設として名古屋市に登録しているため、分散備蓄にも協力していて、500ml水408本とビスケット400食、パック式トイレ1312回分を市から預かり保管しています。受け入れについては名古屋市と一人当たりの面積で約束しているため、350名程の受け入れとなりますが、それ以上の方が来てしまったらどうしようか、24時間以上滞在しようとされる方にどう対応しようか、この対応にどれくらいの人数を割かなければならないかなど、考えることはたくさんありますね。

  • 社屋の移転によって、ほとんどの社員・スタッフが自宅から会社までの距離が遠くなりました。このため、発災後の出社に時間がかかるので、少人数で災害対策本部などを立ち上げられるよう初動マニュアルを見直しています。また、通信手段においても発信専用と受信専用の電話を分けたり、安否確認メールをLineと連携させたりするのなど見直しをしています。
    新社屋を建てたときにガソリンスタンドを設置したものの、遠方での燃料確保が課題です。遠方での取材中、給油のためだけに名古屋に戻ってくることはできないので、災害時でも優先的に燃料を提供してくれるような契約ができないか検討している所です。

    考えば考えるほど課題は尽きないですね。
    本日はありがとうございました。



中京テレビ放送株式会社

「チュウキョ~くん 」でお馴染みの中京テレビ放送株式会社。
1968年「中京ユー・エッチ・エフ・テレビ放送株式会社 」として創立。
2019年度上期(4~9月)視聴率3冠王(全日・ゴールデン・プライムタイムで1位)を達成したテレビ局。
現在放送されている情報番組「キャッチ」や「ストライク!」をはじめ、「PS純金(ゴールド)」 や「前略、大徳さん」など多くの人気番組をお茶の間に届けている。

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